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IFS実践編③:真逆の気持ちがぶつかるとき ― 二極化という内なる葛藤


「もうしない」と決めたのに、また繰り返してしまう…


「休みたい」と思っているのに、休むと罪悪感で苦しくなる…


「やらないと」とわかっているのに、なかなか動けない…


このように、自分の中で真逆の気持ちや行動が同時に起きることがあります。

今回は、IFS(内的家族システム療法)の視点から、このような「二極化」についてお話ししたいと思います。



この記事で初めてIFSについて知る方もいらっしゃるかと思いますので、簡単にこれまでの記事を振り返ります。


最初の記事『IFSについて』では、IFSでは、私たちの心の内側にはいろいろな「部分(パーツ)」が存在している、という概念を説明しました。


どの反応(パーツ)にも、本来はご自身を守るための善意がある、という前提に立つことがとても大切なポイントです。


IFSは、ご自身のどのような反応も「悪者」にせず、丁寧に耳を傾けながら、その部分が何を感じ、何を守ろうとしていたのかを理解していくアプローチです。


そして、『IFS実践編①』では大まかにパーツの種類についてまとめ、

『IFS実践編②』では「自己否定パーツ」に焦点を当てて深めました。


今回は、「二極化」という葛藤状態について、IFSの視点から整理していきます。



🫧二極化とは


「二極化」とは、簡単に言うと「正反対の反応が同時に存在する」状態です。


例えば、

「過食しないようにしたい」と思っているのに、どうしても爆発的に食べてしまう…


「やらないと」とわかっているけれど、やらないまま時間が経ってしまう…


「人と接しないと」と思う一方で、外に出るのが怖い…


「休みたい」と思う一方で、休むと罪悪感が強くなる…


このように、一般的には「葛藤」と言われる状態を、IFSでは「二極化」と呼んでいます。


二極化は、さまざまな悩みや苦しみの中に生じています。


IFSの概念で言うと、

「管理者VS管理者」「消防士VS消防士」「消防士VS管理者」など、

いろいろなパターンがあります。


この記事では、二極化の代表的な形として、

「消防士パーツ」と「管理者パーツ」が内側でぶつかる状態について整理していきたいと思います。



🫧パーツの善意


以前の記事でも書いたように、IFSでは「パーツには必ず良い意図がある」と考えます。


それぞれのパーツは、一見するとご本人を苦しめているように見えるかもしれません。

けれど、そのパーツなりに、ご自身を助けようとして出てきています。


ただ、「持ち主である本人を助ける」という最終目標は同じでも、守り方や守ろうとしているものが異なることがあります。


そうすると、パーツ同士で対立が生まれます。

その代表が「二極化」です。


真逆の思いを抱えることは、ご本人にとって、とてもしんどいことです。


自分のことを「矛盾している」「言ったことをできていない」と責めてしまうこともありますし、どちらを選んでも苦しくなってしまうことがあります。


けれど、二極化しているとき、どちらかが正しくて、どちらかが間違っているわけではありません。


それぞれが、ご自身を精一杯守ろうとしているのです。



🫧「消防士」VS「管理者


「真逆の反応」の代表が、IFSでいうところの「消防士パーツ」VS「管理者パーツ」です。


『IFS実践編①』で書いた「消防士」と「管理者」について、ここで簡単におさらいします。


🧯消防士(ファイヤーファイター)

消防士パーツは、何かが起きた“あと”に、最速で助けようと出てくるパーツです。


強い不安や痛みを瞬時に消すため、衝動的な行動や感情を伴うこともあります。

自傷行為、過食、ODなどの行動や、解離などが代表例とされます。


モットーは、

いかなる代償を払っても痛みを消す」


ここでぜひ、本物の消防士さんをイメージしてみてください。


火事が起き、その火を消すためなら、家が水浸しになろうとも、家電が使えなくなろうとも構わない。

必要な物があったとしても目もくれず、とにかく目の前の火を消す。


その消防士が去った後は、火は消えたけれど、後片付けが大変な状態になっているかもしれません。


それでも、消防士パーツは「この人が感じた痛みを今すぐに消すんだ」と全力を尽くします。


🛡️管理者パーツ

管理者パーツは、傷つく前に守ろうとする、先回りのパーツです。


例えば、

「感情が爆発したら後がもっと大変になる」

「過食したら、その後で身体がしんどくなるから、やらないようにしないと」

「ちゃんとしないと、また傷ついてしまう」


こうした思いは、ご自身を守るために、日々すぐ隣で働いてくれている管理者パーツの声かもしれません。


このような管理者パーツは、常に働いていることが多く、ご自身にとってはかなり馴染みがある反応です。


そのため、私たちは、この「管理者パーツ」を自分自身だと思っていることが多いです。


「これもパーツである」と気づくと、ご自身の心の理解が変わっていくことがあります。


管理者パーツを「自分の理性的な正しい意見」だと思っていると、消防士パーツを許せなくなってしまうことがあります。


同時に、管理者パーツの働きは「当たり前」と認識してしまうため、その善意や疲れに気づけず、労われないままになってしまうこともあります。


ご自身の中に真逆の気持ちや行動があったら、ぜひその両方を「パーツである」と捉え、それぞれの働きに関心を向けていきたいと思います。



🫧管理者パーツにも光を当てる


私たち支援者側の問題でもありますが、どちらかというと「消防士」の反応に関心が向きやすいところがあります。


最近では、ODなどの自傷行為についても、「孤独なストレス対処」として理解されることが増えてきました。

それはとても大切な理解です。


ただ、それでも苦しみが変わらないとしたら、「管理者パーツ」への理解を深めることが必要なのかもしれません。


「消防士パーツは、その時の痛みを消そうとしてくれているんだ」と気づいたら、同時に、


「消防士が出てこないように、いつも警戒してくれているパーツ」

「後でもっと苦しくならないように、必死に先回りしてくれているパーツ」

このような「管理者パーツ」の存在にも気づいていけると、


消防士パーツにも管理者パーツにも理解が深まり、双方に対して今までとは少し違った気持ちを抱けることがあります。


消防士パーツにも、管理者パーツにも、どちらにもスポットライトを当ててあげることが大切です。



🫧二極化を理解する意味


真逆の反応の役割をそれぞれ理解する意味は、「権力闘争にしない」ことにあります。


私たちは子どもの頃から、

「一度やると言ったらやりなさい」

「やらないのは、やる気がないからでしょう」

「我慢できないだけでは」

といった言葉を受け取りながら、「一貫して社会的に好ましい行動をすること」を求められてきたところがあります。


そのため、自分の中に矛盾した気持ちがあったり、「もうしない」と決めたことをまた繰り返してしまったりすると、強い自己否定が生じやすくなります。


けれど、実際には、これらの反応は何もおかしくありません。


むしろ、反対の思いや行動があることで、絶妙にご自身のバランスを取っている場合があります。


IFSでは「消防士はコントロールできないと思いましょう」と言います。


これは「諦めましょう」という意味ではありません。

「消防士VS管理者」という、互いに反目している状態では、内的システムが協力できません。


ですから、痛みを消すためにスーパーマンのように出てくる消防士も、それを「やめよう」と先回りして傷つきを防ごうとする管理者も、「なくすべきもの」としないこと。。


「大切な反応」という関心を向けていくことを目指します。


それだけでも、内的な緊張が少し和らぐことがあります。


そうすると、不思議と、消防士パーツも管理者パーツも少し力を抜くことができるようになり、今までよりも強烈さが和らいでいく方向に向かえることがあります。



🫧ご自身と「二極化」をつなぐ


以前の記事と重なりますが、IFSの根幹は「自分自身(セルフ)とそれぞれのパーツとの関係性を築く」ことです。


パーツとの関係性ができていくことで、重荷を一身に背負っていたパーツが少しずつ安心し、本来の力が戻っていきます。


関係性を作るためには、まずパーツに気づくことがとても大切です。


例えば、私たちは怒っているとき、「怒りそのものが自分自身だ」と感じることがあります。


ただ、そのときに、

「怒っているパーツがいる」

と気づき、その思いに耳を傾けるような心持ちで怒りに接することで、ご自身とパーツとの関係性が少しずつ生まれていきます。


パーツとの関係性を作っていく母体である「セルフ」は、「思いやり・好奇心・つながり」の状態です。


ご自身で、ご自分の反応に対して、

「そうなんだね」

と呼応するようなイメージです。


ご自身のさまざまなパーツに対して、思いやりと好奇心を持ち、つながろうとする心のあり方がセルフです。



🫧二極化しているパーツとつながる


二極化しているときも、どちらかを抑え込もうとするのではなく、


まずは「どちらのパーツも、何かを守ろうとしているのかもしれない」と、

少し距離を取って見ていくことが大切です。


例えば、消防士パーツには

「その時の痛みを、とにかく消そうとしてくれているんだな」

と気づいてみる。


そして管理者パーツには、

「あまり消防士が活躍すると、後でもっと苦しくなってしまうから、そうならないようにいつも心配してくれているんだな」

と気づいてみる。。


こうして気づいている状態は、今のご自身と、トラウマとして一人ぼっちのままだったパーツが、関係性を結び始めた証でもあります。


“自分の内側と協力できるようになる”ことが、IFSの目指す道です。


パーツたちが対立していたり、ひとつのパーツに大きな負担がかかっていたりすると、ご自身の体感としては非常に苦しくなります。


だからこそ、「なくなってほしい」「どうしたらこの反応は鎮まるのか」と思うのは、とても自然なことです。


けれど、その反応は、本来なくさなくていいものです。


善意をもったパーツが活躍しているのに、苦しさが生じるのは、そのパーツが不安や危険を感じ、休みなく働き続けているからかもしれません。


「本人を守らなきゃ!」と、まさに消防士が家から出た火を全力で消すように、何人もの警察官が街中をパトロールし続けるように、休みなく働いているのです。


だからこそ、まずは、


「不安になるよね」

「すごく怖かったよね」


と、パーツが抱えてくれている不安や怖さに声をかけてあげるだけでも、パーツのしんどさは少し軽くなるのではないかと感じます。



🫧まとめ


今回は、二極化の代表である「消防士パーツ」VS「管理者パーツ」を取り上げました。


二極化しているとき、どちらかが正しくて、どちらかが間違っているわけではありません。

どちらのパーツも、ご自身を守ろうとしてくれています。


ただ、その方法や、守ろうとしているものが違うために、内側で対立が起きているのです。


まずは、「またやってしまった」とご自身を責めることがあったら、


「今、どんなパーツが私を守ろうとしているのだろう」と、


やわらかい関心を向けてみるだけで、ほんの少し、息がつけることがあります。




今回取り上げた二極化という状態は、さまざまな組み合わせで生じます。


そのひとつが、

「自分を大切にしないと」VS「自分なんて大事だと思えない」という、

「管理者」同士の二極化です。


次回は、二極化のより具体的なパターンについて書いてみようかなと思っています。



長くなってしまいましたが、最後までお読みくださってありがとうございました。


スローペースですが、ブログも更新して参りますので、またお立ち寄りください。




 
 
 

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